私の友人にはASD(自閉症スペクトラム)の人がいます。前、話した人ですね。
ASDの友人と再会し仲直りした後のことです。
ある日、自閉症スペクトラム(アスペルガー、ASD)の友人から
「悪いけれど、足柄サービスエリアまでblackyの旦那さんに運転してもらえないかな?」とメールがきました。
「…は?意味わからん。」と思いました。
いくら友人の頼みでも、何でもOKとは言いません。
とはいえ、急に友人が言い出したのはASDの特性で変な話になってしまったのかなと思って、話をよくきくことにしました。なぜ足柄サービスエリアに行きたいのか?尋ねると
「ヱヴァンゲリヲンがあるから、写真を撮りたい。」と返信がありました。
友人は、ヱヴァンゲリヲンのファンです。当時、東名の足柄サービスエリアでヱヴァンゲリヲンがコラボしていたので、それを見に行きたいとのことでした。
友人は車は持っていないし、運転もできません。我が家には車はあるけれど、ペーパードライバーのため運転は難しいことを友人は知っていました。それで、私の夫に運転してほしいとお願いしたようです。
友人は、ASDの特性でこだわりが強く状況を読み取るのが苦手です。「友人の夫に運転お願いする」なんて、普通の人にとっては変な話で自己中心的に感じるでしょうが、友人自身はしっかり考えてから私に頼んでいます。
夫は運転はできるけれど、ASDの友人と一緒にでかけるのは難しそうでした。
私は友人と仲良し。でもね、友人は野菜で言えばパクチーみたいにパンチが効いてる個性的な人。パクチー嫌いな人もいるし、好きな人もいる。私と仲良しでも、嫌いと感じる人もいる。誰かを好きになったり嫌いになったりするのは食べ物の好き嫌いと同じでごく普通のこと。
ヱヴァンゲリヲンなんて興味もない夫が、一緒にドライブ、ましてや運転手なんて、夫には難しい。夫はうつ病で休職しているし、負担はかけたくない。
で、私は考えました。
足柄サービスエリアに車以外で行ける方法はないのか?
ADHD傾向でアイデアだけはポンポン思い付く私。車中泊、列車旅を経験して遠出に対して詳しくなり自信もついてきた。「きっとある。何か方法はあるはず!」 と調べまくりました。
調べた結果、足柄サービスエリアは高速道路から以外に一般道からも車で入れるぷらっとパークであるとわかりました。徒歩※でも入れそうです。
※サービスエリアは高速道路を利用する人のための施設であり、NEXCO中日本ではぷらっとパークを介する待ち合わせを推奨していません。ぷらっとパークから高速道路本線に入ることはできませんし、徒歩でも高速道路側の駐車場に入ることは法違反です。
足柄サービスエリアに徒歩で行くとしたら、途中までは電車で行くことにしました。足柄サービスエリアがどこの駅から近いのか調べると、御殿場線の足柄駅が近いことが分かりました。その道のりは片道約3キロメートルです。1時間以内にたどり着きそうです。
とはいえ、Googleストリートビューで道をざっと見てみると、道は舗装はされているようですが、山の中です。人もあまりいなさそうで、あまり歩きたくありません。
少しでも歩かないですむ方法をめちゃくちゃ調べたけれど、御殿場線の足柄駅からは路線バスはありませんでした。
私は、あるテレビ番組を思い出しました。
テレビ東京のローカル路線バス乗り継ぎの旅です。
ローカル路線バス乗り継ぎの旅では、電車、高速バス、タクシーなどを利用せず、路線バスと徒歩でゴールを目指す旅番組です。しっかりものの太川陽介さんと蛭子能収さん、毎回替わる女性タレント(番組ではマドンナと呼ばれる)の3人が出演します。私、路線バス旅好きなんです。
太川さんが道路地図をにらめっこしてルートを探し、案内所や道行く人に道を尋ねてバスを乗り継いでいきます。三人が考え抜いたルートでもどうしてもバスの乗り継ぎがうまくいかないときがあります。特に県境は路線バスが途切れてしまいます。バスがないときは次のバス停まで徒歩で移動しますが、山道を数キロメートル歩くときもあります。
私は足柄サービスエリアに行くのに、片道3キロメートル歩くことになります。往復6キロメートルは大変かもしれない。けれど、路線バスの旅で太川さん達もそれぐらい歩いていたから、私も行ける気がする。知らない道だから不安だけど、たどり着けるのかわからないなんて路線バスの旅みたいで面白いじゃないか。わくわくする。
私は友人と足柄サービスエリアに車を使わず行くことにしました。
すると、話を聞き付けた息子も行きたいと言います。
えーどうしようか…
息子、連れていこう。
息子が一緒に行きたいと言っていることを友人に話したら、息子も一緒に行くことを友人はOKしてくれました。
路線バスの旅でいえば
太川さん=ADHDうっかりblacky
蛭子さん=ASDエヴァLOVEな友人
マドンナ=子鉄息子
役者は揃った。さて出発だ。
友人と途中で合流し、電車を乗り継いで、足柄駅に着きました。駅前は人少ない…。閑散としていますが、快晴で気持ちがいい。私たちは、意気揚々と歩き出しました。
友人は地図が読めません(言語が得意なASDです)。私はスマホを片手に地図を見ながら歩きます。路線バス旅でいえば、私は太川さんだから!
足柄サービスエリアは駅から高いところにあります。行きは上り坂。バギー(ベビーカー)を交代で押して進みます。重くて大変でした。
木々が繁り暗い道もありました。私たち以外は誰ともすれ違わないので不安でしたが、Googleマップの通りに歩いたら、ちゃんと足柄サービスエリアにたどり着きました。すごいねーGoogleマップ。
ぷらっとパークのゲートをくぐり、サービスエリアに入りました。本当に徒歩で行けるんだ!と友人と喜びました。
私たちは、ヱヴァンゲリヲンの展示を回りました。子鉄息子は、興味ないだろうと思っていたら、案外楽しそうでした。ヱヴァ新幹線(ヱヴァンゲリヲンのラッピング新幹線500系)を知っているのでヱヴァンゲリヲンに少しなじみがあるようです。友人と息子が楽しそうにしているところを、私は撮影しました。
デッカイのを撮影したり
使徒?の麻婆豆腐を食べたり、色々しました。
路線バスの旅では、蛭子さんはマイペースに行動しますが、友人も似ていますね。人目を気にせず仮装してポーズとって写真撮って、すごい楽しんでいました。
友人がヱヴァンゲリヲンについて色々説明してくれたけれど、何一つ私は覚えていません。でも、楽しそうに語り、笑顔でいっぱいだったことは覚えています。
足柄サービスエリアは広いしお店も多いので見て回りたかったのですが、太川さん役の私は遊んでばかりいられません。この後のルートを考えなければなりません。
電車の時刻表を確認すると、御殿場線は電車が少なく、急いで帰ったほうがよさそうです。人家もほとんどない道を歩くので、明るい時間に駅に戻りたい。
私たちは急いで足柄駅に行くことにしました。バギーに息子を乗せて、猛ダッシュ。とはいえ、私は走るのが苦手でとても遅い。友人がバギーを押してくれました。
無事、足柄駅に着きました。二人ともゼーゼー、ハァハァー、肩で息をしていました。なんとか予定していた電車に間に合いました。電車に乗ると友人は寝てしまいました。蛭子さんもバスでよく眠ってしまうんだよなぁ。
松田駅で乗り換えようとしたら、駅前でまつだ桜祭りのポスターを見つけました。どうやら近くで開催しているようです。
まだ時間もあったので、私たちは寄ることにしました。とはいえ、開催場所もどんなイベントなのかもよくわかりません。
観光客らしき人を見つけて、その人達にくっついて歩いたら、シャトルバス乗り場にたどり着きました。なんとかなるもんです。
私たちはバスに乗り、会場に着きました。
「わぁーきれい!」
早咲きの河津桜が満開に咲き誇っていました。桜の下には、黄色の菜の花がいっぱい。一足先の春です。
私たちは桜を見ながら、遊歩道を歩きました。子鉄息子は、桜を見上げ「トンネル♪」と言って喜んでいました。
桜祭りを楽しんだ後、松田駅から電車に乗りました。その後、友人と別れ、家に帰りました。
子連れでの遠出で不安でしたが、無事に旅を終えました。もう夜だったので急いで息子を寝かしつけました。息子はすぐ寝て、私はひとり今日のことを思い返し充実感と達成感を味わっていました。
すると、玄関のほうからガチャガチャ、ドタドタと音が聞こえました。夫が帰ってきました。私が一日いなかったので、夫は友人と飲みに行っていました。夫はべろべろに酔っていました。
そして、事件は起きました…。
つづく